三重出身・呉さんに監督賞 モントリオール映画祭

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【モントリオール=共同】カナダで開催されていた第三十八回モントリオール世界映画祭で一日夕(日本時間二日未明)、吉永小百合さん主演の「ふしぎな岬の物語」(成島出(いずる)監督)が最高賞のグランプリに次ぐ審査員特別グランプリを受けた。「そこのみにて光輝く」の呉美保(おみぽ)監督が最優秀監督賞を受賞した。日本作品の審査員特別グランプリは二〇一一年の「わが母の記」(原田真人監督)以来。監督賞は市川準監督と根岸吉太郎監督が受けている。

 

◆吉永さん主演作には特別賞

 

 吉永さんは舞台上でトロフィーを受け取るとフランス語で「私たち皆、本当に感激しております」とスピーチし、満面の笑みを浮かべた。

 

 「ふしぎな-」は、吉永さんが出演した百十八本目の映画で、初めて企画も手掛けた。吉永さん演じる岬のカフェの女店主と集う人々との温かな交流を描いている。十月十一日公開。

 

 同作品は、キリスト教関連団体が贈るエキュメニカル審査員賞も受賞した。

 

 「そこのみ-」は、自ら命を絶った作家佐藤泰志さんが唯一残した長編小説を映画化した作品。北海道函館を舞台に居所を見つけられない男女の出会いを描いた恋愛小説。綾野剛(ごう)さん主演で、四月から各地で公開されている。

 

 呉監督は三重県伊賀市出身で、在日韓国人三世の三十七歳。大阪芸大卒業後、大林宣彦監督の記録係を務める傍ら製作した短編で注目された。長編作に「酒井家のしあわせ」「オカンの嫁入り」がある。綾野さんは岐阜市出身の三十二歳。

 

◆思わず「キャー!」

 

 <吉永小百合さんの話>(授賞発表では)私が最初に「キャー!」と言ってしまいました。手作りの映画がカナダでこんなに温かく受け止めてもらえるなんて思ってもみなかった。観客の皆さんに「感動した」と言ってもらえたのが一番の喜びで、二つの賞はプラスアルファです。

 

◆原作者が報われた

 

 <呉美保監督の話>原作者の佐藤泰志さんは芥川賞に五回もノミネートされて落選して、自殺されました。約二十五年前に書かれた小説が映画に変わって、(受賞できて)佐藤さんが報われたような気がして今、本当に胸がいっぱいです。佐藤さんに、おめでとうございますと言いたいです。

 

◆風が吹いた感じ

 

 <綾野剛さんの話>風が吹いたなって感じです。佐藤泰志さんに届けられたかなと思います。この監督賞をきっかけに日本でも多くの人に届くことを願っています。国と文化を超えてコミュニケーションをとれた実感があり、映画はあらためて世界共通語だと思いました。

 

 <モントリオール世界映画祭>1977年に始まった北米最大級の映画祭。83年に「未完の対局」(佐藤純弥監督など、日中合作)、2006年に「長い散歩」(奥田瑛二監督)、08年に「おくりびと」(滝田洋二郎監督)が最高賞のグランプリ獲得。09年に根岸吉太郎監督が最優秀監督賞、10年に深津絵里さんが最優秀女優賞に選ばれるなど日本関連作品の評価が高い。

ー中日新聞