大学や大学院を出た外国人新卒者を採用する動きが広がっている。国際感覚があり海外の生活習慣にも通じた若い人材は経営のグローバル化を進めるうえで貴重な戦力だ。外国人材の積極採用は日本企業の成長力向上につながる。
外国人採用をさらに促すため、政府は規制を見直して日本での在留資格を得やすくするべきだ。企業も能力や成果で処遇する仕組みを強める必要がある。外国人が日本で働きやすい環境づくりに官民それぞれが取り組むときだ。
これまで日本企業の外国人採用は専門性のある人材の中途採用が中心だった。近年力を入れているのは海外の大学・大学院を出る学生や留学生の新卒採用だ。
日立製作所は今春入社の新卒者のうち外国人が1割を超えた。ローソンは新卒採用の3割を外国人にするという基準を設けている。
リクルートキャリア(東京・千代田)の「就職白書」によれば、来春の新卒採用で海外の大学・院卒の外国人学生を採る企業の割合は従業員5千人以上で41%にのぼる。今春に比べて倍増する。
企業の関心が高いのがアジアの人材だ。アジア市場が収益源になり、この地域の出身者への需要は一段と高まろう。人材サービス会社の役割も重要になる。
人材紹介の南富士(静岡県三島市)は中国やベトナム、インドネシアで現地の大学生向けに私設教育機関を開き、卒業前の半年ほど企画力やリーダーシップなどの研修をして企業に送り込んでいる。
GAコンサルタンツ(大阪市)はベトナムの大学に日本語教室を設け、技術系学生らを日本企業に紹介する。人材サービス会社が海外で活発に活動すれば、日本企業の外国人採用にも弾みがつく。
政府に求めたいのは大学・院卒者へ就労ビザを発給するときの条件の緩和だ。現在は卒業した学科や専攻と、就職先での業務内容が異なるとビザがおりにくい。
就職先での業務に必要な専門知識があることをみるためだが、文系の学生がソフト開発など技術関係の仕事に就く際の壁になっている。見直しを急いでほしい。
年功制が強すぎれば外国人の不満が高まりやすい。若くても重要なポストに就ける実力主義の人事制度が企業に求められる。日常の生活や医療などの相談窓口を各地域で充実させていく必要もある。外国の人材が力を発揮できる環境を総合的に整えていきたい。
ー日本経済新聞